ニッチな趣味のひとつとして ー 『外国語の水曜日』

外国語の水曜日―学習法としての言語学入門
黒田 龍之助
現代書館
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英語以外の言語に興味を持ってよかったことの一つは「黒田龍之助さん」というフリーランス言語学者の存在に気づけたことです。
この本はスラヴ言語が専門の黒田さんが大学教員をしていたころ、先生のロシア語を受講する学生と研究室で過ごした日々や、外国語の学び方にについて、他にも言語学の基礎知識まで収められていて、外国語学習者にはたまらない内容。大学で言語学ちょっとやったことあるのよね。

黒田先生の文章からは「純粋に学ぶことが楽しい!」という気持ちが伝わってきて、読む人のやる気を引き出させてくれます。先生自身がいろんな言語を学ぶことが好きで、独学だったり、時には学生と一緒にチャレンジしているのが面白い。

印象に残ったのは、他の外国語教師と一緒にイタリア語を習った時のエピソード。日々の授業で学生の反応が薄く、やりたい授業ができないことから、「自分が生徒になったら思い切り楽しい授業にしよう」と心に決めた外国語教師たちの本気の学習態度が胸に響きました……。

そんな多言語ラバー・黒田先生が推奨する学習スタイルは、硬派なテキストをじっくり読んで、テープを聴いて発音を真似る……という地味で王道なもの。英会話界隈が求める「楽で」「あっという間にできる」「画期的な」学習方法なんて無いんだよ、と背中で語ってくれます。黒田先生によると、外国語の上達方法はそれらのニーズとは真逆のもの ー つまり、「あきらめず、しつこくやる」、これに尽きると。

英語学習がどんどん実用性、即効性に縛られていけばいくほど、その他の言語を学ぶことがどんどん無駄で贅沢なもののように思えてきます。実際、google翻訳の和訳の精度は格段に良くなっているし、いずれ外国人とのコミュニケーションが翻訳機を通すだけでスムーズにできるようになるでしょう。英語すら学ばなくてもよいという流れにすらなるのかも?

国語学習はコミュニケーションツールのためというより、異文化理解のためとか、単なるニッチな趣味の ひとつになるはずです。そうなった時、このスラヴ言語専門の言語学者の存在がより大きくなるでしょう。

黒田先生の本がそばにあれば、辞めないでいられるはず。