国家ができるまで ー 『英仏百年戦争』

英仏百年戦争 (集英社新書)
佐藤 賢一
集英社
売り上げランキング: 19,028

言語を学ぶならその国の成り立ちも知りたい!というわけで読んでみました。
実は、百年戦争って名前しか覚えていなかった。それも幼少期に愛読していたクイズ本にこの名称を問う問題があったからです。高校の世界史の授業は何も覚えていないのに……。ちなみにその本には百年戦争後に英国で勃発する「薔薇戦争」の問題もあったっけ。詰め込んでいただけの知識に、ようやく内容理解が追いつきました。
読んでびっくり。英仏双方がいがみあってついつい100年間も戦争してしまった、という話と思っていたんですけど、二国がそれぞれ「国家」の意識を獲得し、今日のイギリス・フランスのかたちになってゆく期間だったらしいのだ。

百年戦争と呼ばれる一連の紛争が始まる前をまとめると
・フランス:フランス国王はいるけれど、周りに国王と同等、あるいはそれ以上の領土を持つフランス人貴族が点在。いざ戦争となるとフランス軍として集うものの、国王にとって領主たちは外様なので、国の利益より各々の領土が最優先されていた。ほぼ外国同士というところ。
・イギリス(イングランド):ノルマンコンクエストにより、アングロサクソン人をフランス人が征服(戦争開始当時はプランタジネット朝)。統治者はフランス、庶民はアングロサクソン、の構図に。英語を学んでいて「家畜の名詞(カウ、ピッグとか)は英語だけど食肉になるとビーフ、ポークとフランス語由来になる。高級な方はフランス語」というのを読んだことがあるけど、そのルーツはここにあったようです。

どちらも統治者はフランス人。なので戦争の理由もフランス人同士の主権争いでしかありませんでした。登場人物たちは全員フランス語を話していたので、まだ「イングランド人」と呼べる人もいなかった。 そこから長い戦いで一進一退を繰り返します。賢い王が税金システムを生み出して軍資金を調達したり、パリがイングランド軍の領土になったり、和平交渉が何度も決裂したり。そしていつしか、フランス人同士が戦っていた戦争が、「イングランド対フランス」の征服戦争に変化していったんですね。イングランド王ではじめてフランス語がうまく喋れないヘンリー5世が出てきたあたりがイングランド人の誕生の瞬間でしょう。フランスは税金という領主たちと違うシステムで資金繰りをしていく中で国家としてまとまり、イングランドはフランスと自分たちを対応させることでナショナリズムを想起させる。どんどん二国が別々の国に変わっていく様子は面白かったです。フランスの勝利で幕を閉じた百年戦争の後はどちらも国を一つにまとめることに興味が移っているしね。

というわけで、この戦争の真の意味がよく伝わる本でした。面白かった〜。たまに挟まれる著者のシェイクスピアへの強烈なdisもイイ味出してます!