手に取るように「編集」がわかる本

職業としての「編集者」
片山一行
エイチアンドアイ
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ビジネス書を読む時は何となく隠れキリシタン的にこそこそ読むし、ツイッターで書名を呟くのが憚られる。カッコがつかないジャンルということは、ベストセラーも多くあり、大衆が最も手に取る、庶民的なものということでもある。

著者はビジネス書の編集に携わって40年の大ベテラン。まだ書店に経理や税金などについては「法律経済書」と呼ばれる小難しい専門書しかなかった時代に、ビジネス書という易しい入門書を打ち出した世代だそう。

この本では、ビジネス書の作り方と「本づくり」への著者の美学や信念が込められていて、これもまた立派な編集ハウツーもののビジネス書である。びじねすびじねすくどいですね。でも著者の方が相当くどかった。この、くどすぎてバカにされてるような、イライラしてくる感じ、まさにビジネス書によくあるやつだ。しかし一見レベルが低いような繰り返しにも理由はある。

ビジネス書は「分かりやすさ」が第一。

「手に取るように○○が分かる本」や「3分で○○がわかる!」などのタイトルがあるように、ビジネス書はすぐに答えが知りたい多忙のビジネスマンや、キャッチーなタイトルと読みやすさに惹かれて本を選ぶような、普段は本を読まない人のために書かれている。噛み砕いて説明する時、繰り返しはどうしても必要になるし、易しくざっくりまとめれば内容は薄く感じる。

それに編集者は文章だけでなく見た目でも分かりやすさを追求する。例えば、改行はひと段落が5行以上にならないように。ページの字数も少なめに。そして要点のまとめを図解で入れる……などなど。

こうしてみると、ビジネス書は徹底的に読者目線である。まさに至れり尽くせりで、本を読まない人も手に取りやすいのは分かる。 でも「『これを押さえれば会話の9割がは進む!』などと言われるとついフラフラ買ってしまうのが読者心理である」と著者がこぼしているあたり、読者目線!といいながら、耳障りのいい言葉で器具の購入を促す、ダイエット商品の通販番組みたいでもあるなあと(笑)。どの本を読む時も同じだけど、やはり目的意識を持ったりとか、何か面白いところはないかと能動的に読む姿勢が何より大事である。本当に9割が分かってしまえる可能性もあるのだし。

今まで何となく、ビジネス書とか自己啓発書とかって、「分かりやすさ」病が深刻なのではと思っていたのだけど、そもそもビジネス書の出発点がそこだと分かって何となくすっきり。そして著者はさすがにベテランなだけあって、どんな本でも魂を込めようとする姿勢を持ち、装丁テクニックなど細部への配慮を怠らない、とても誠実な人だなという印象でした。

それに、何かを分かりやすく伝えようとする試みはそれをする人自身を凄く成長させると思う。その点で、ビジネス書は書いた者勝ちなところがありそうだ。今のSNSのように、カジュアルに全員がビジネス書を出す日が来たりして……